2018年度 理事長所信

【はじめに】

第55代理事長
中川 誠

 2009年4月、私は伊勢崎青年会議所に入会しました。当時はリーマンショックなどによって世界中が経済不安の真っただ中にあった頃でした。本音で語り合える相手や、仕事の不安や悩みを忘れることができる場所を求めての入会でしたが、伊勢崎青年会議所での様々な経験を通じて多くの仲間に恵まれ、仕事の不安や悩みに前向きに臨むことができるようになり、はたして伊勢崎青年会議所は、私にとって仕事にも私生活にも良い影響を与えてくれるかけがえのないものとなりました。その伊勢崎青年会議所の第55代理事長を務めさせていただけることを大変光栄に思うと同時に、責任の大きさに身の引き締まる思いです。

 本年度、伊勢崎青年会議所の理事長を務めさせていただくにあたり大切にしたいことがあります。それは「歴史と伝統への敬意」と「次の時代を切り拓く覚悟」です。伊勢崎青年会議所には長い歴史とそこで生み出された伝統があります。諸先輩方の弛まぬ努力によってもたらされたこの歴史と伝統に、我々は深く敬意を払うべきです。また、諸先輩方がそうしてきたように、我々も次の時代を切り拓くべく変化を恐れず挑戦していかねばなりません。そのためには、どんな困難があろうとも必ず成し遂げるという確固たる覚悟が必要なのです。

 青年会議所運動の中で、我々は自分達の活動を自ら判断し、決定し、実行しています。我々の判断や決定に容喙する者がいない一方で、活動の結果の良し悪しを直接的に批評する第三者も存在しません。それ故に、独り善がりになることや傲岸不遜な考えになることを、我々は最も恐れなくてはなりません。では、どのような心掛けで運動に臨むべきなのでしょうか。私はプロ意識を持つべきであると考えます。私の考えるプロ意識とは、困難に際しても諦めない強い信念を持って行動すること、そして、その行動の結果に責任を負うということです。仕事であればプロ意識を持つことは当然のことですが、我々は青年会議所運動を生業にしている訳ではありません。しかしながら、あるいは、そうであるからこそ、明るい豊かな社会の実現という壮大な理想を実現させるために信念と責任、すなわちプロ意識を持つことが必要なのです。

 

【55年の歴史と伝統への敬意と感謝】

 本年度、伊勢崎青年会議所は創立55周年を迎えます。1963年11月に創立されて以来、伊勢崎青年会議所は半世紀以上の長きにわたり運動を続けてきました。そして、その中で一つ一つ実績を積み重ね、地域から大きな信頼を得るに至ったことは言うまでもありません。今後、この伊勢崎で青年会議所運動を続けていく我々は、これまでの運動とその実績に敬意を払うと共に、地域からの信頼を伊勢崎青年会議所に対する期待と捉え、それに応えるべく妥協することなく運動を続けていかねばなりません。本年度はそれらを再認識すると同時に、敬意と感謝を表すため記念式典、記念祝賀会を開催いたします。

【会員拡大のさらなる推進】

 近年、伊勢崎青年会議所では各年度の理事長の力強い号令の下、会員拡大を推し進めてまいりました。その努力が実り、現在では会員数は徐々にではありますが増加しています。伊勢崎青年会議所の永続的な発展のため、今後もこの勢いを止めることなく会員拡大を推進していくべきです。 会員拡大を実現させた実績の裏には、各年度の担当者をはじめとした会員拡大に積極的なメンバーの存在があります。そして、彼らには皆それぞれに、高い志と共に独自の手法やノウハウがあるはずです。しかし、どんなに素晴らしいスキルやノウハウがあったとしても、それを活かせる者が限られてしまっていては、その活動はいずれ限界を迎えてしまいます。今後は、会員拡大において活躍してきたメンバーのスキルやノウハウを属人的なもので終わらせることなく、貴重な資源として組織の力としながら活用していくべきであると考えます。手法やノウハウを共有する場を設け、会員拡大を特定の個人ではなくメンバー全員で取り組む活動とし更なる推進を図ります。 また、過去の事例の研究によって新たなノウハウを生み出すことや、我々メンバー自身が青年会議所の魅力を再確認するための活動、あるいは、新入会員のモチベートやメンタルケアなどによる会員減少を防ぐ活動といった取り組みにも目を向けていきたいと思います。なぜなら、それは伊勢崎青年会議所が永続的に会員を拡大し、運動を継続していくために必要な要素であると考えるからです。
以上の取り組みによって、本年度も会員拡大をさらに推し進めてまいります。

 

【出向者の経験をLOMの力に】

 青年会議所には「出向」という制度があります。所属LOM(青年会議所)の垣根を超え、群馬ブロック協議会や関東地区協議会、日本青年会議所といった大きなフィールドで青年会議所運動を行うものです。伊勢崎青年会議所のメンバーも毎年各地に出向し、それぞれ役割を担い活躍しています。近年では、出向先で委員長として運動の最前線に立って活躍し、大きな責任を全うしたメンバーもいます。
出向のメリットは大変大きく、その内容も会議運営のノウハウや新たな知識の獲得、他の青年会議所に所属するメンバーとの交流による人脈の拡大など多岐にわたり、枚挙に暇がありません。そして、出向先で得られたそれらの知識や経験、人脈などは出向メンバーのみならず、伊勢崎青年会議所そのものの活動に活かされるものも多く、組織全体の貴重な財産であると言えます。本年度は、出向者の支援を行うと同時に、それらをメンバーで広く共有し、伊勢崎青年会議所全体のレベルアップを図っていきます。

【会員相互のコミュニケーションの強化】

青年会議所は様々な個性を持った人材が集まる場所です。そして、お互いの個性を尊重し合い、自分にないものを持った仲間と交流することで、自らを向上させることのできる学びの場でもあります。青年会議所の活動のみならず、仕事や私生活においてもその学びは貴重かつ有益なものであり、そのことからも会員相互の交流は大変重要な要素であると言えます。 また、会員とは現役のメンバーだけではありません。歴史と伝統を紡いでこられた多くの先輩も我々と志を同じくする会員です。歴史と伝統をしっかりと受け継ぎ、正しく伝えていくためにも、諸先輩方とも積極的に交流を図っていくべきであると考えます。
本年度は、それらのことをメンバー全員がしっかりと認識した上で、より充実した交流がなされるよう活動し、会員相互のコミュニケーションの強化を図っていきます。

【将来に備えた資質向上】

 先に述べた通り、近年の会員拡大の成功により伊勢崎青年会議所の在籍人数は増加しています。しかし、その一方で高いスキルを持ったメンバーが40歳を迎え卒業していく事実からも目を背けるわけにはいきません。 青年会議所は単年度制という制度によって運営されており、我々メンバーは毎年役割を変えながら経験を積み重ね、スキルを上げていくことができます。しかし、現在のメンバーの在籍年数に目を向けると、入会から3年未満が約半数を占める状況にあり、構成比率において偏りが生じていると言わざるを得ません。新入会員の比率が高いということは、それだけ早期に責任ある立場に就くことができるという側面もあります。ただし、それは同時に、十分な経験を積む前に大きな責任を負うということでもあります。結果として、その責任の重圧に耐えきれなくなることにもなりかねません。そういった事態を回避するためにも、とりわけ入会から間もないメンバーの資質向上は急務であると言えます。
在籍期間が長く経験豊富なメンバーには、その経験の中で積み上げた高いスキルがあります。それは、JAYCEEとしての心構えや姿勢だけでなく、青年経済人として持つべき素養から組織運営のノウハウまで多岐にわたります。本年度は、それらを全体で共有し向上させる活動を強化することで、入会間もないメンバーの経験不足を補う環境を整えると同時に、経験豊富なメンバーにも新たな気づきや学びを得る機会をつくります。そうすることで、全員が高いモチベーションをもって運動に臨める体制を築き、ひいては、伊勢崎青年会議所が永続的に発展していくための体制づくりを図っていきます。

【永く続くまちづくりを目指して】

 まちづくりとは、道路や公園、建物といったインフラの整備だけによるものではなく、社会や文化、経済や環境など生活の根幹を構成するあらゆる要素を含めた暮らしそのものを豊かにするための活動です。故に、それは短い期間で完了するものではなく、長い年月をかけ永続的に行われる活動です。単年度制という制度によって、方針や組織内容を毎年変えながら運動する我々であっても、まちづくり事業においては永続性というまちづくりの本質を意識して運動を展開してきました。今後も、我々はまちづくりの本質をしっかりと捉え運動を行っていかねばなりません。
まちづくりは我々だけが行っているものではありません。当然のことながら、行政や各種まちづくり団体など、我々以外にもまちづくりを行う組織や団体は存在します。そしてそれらは、それぞれスタイルに違いはあっても、大本の部分では伊勢崎の発展という同じ志を持っているはずです。それら他団体との効果的な協働を図り、それぞれの経験やノウハウを持ち寄って力を合わせていくことも大変有意義なことです。そうすることで、伊勢崎におけるまちづくりの機運がさらに高まり、ひいては、まちの永続的な発展に資することになると共に、我々も新たな気づきを得ることとなり、まちづくり事業のさらなる発展、向上が期待できます。
創造的な取り組みには、新しい感性や既成概念にとらわれないことが必要です。我々が行うまちづくりも文字通りクリエイティブな活動であり、そこに新しい感性を吹き込むため、自由な発想を持った子どもや学生など若い世代を効果的に巻き込んでいくことも必要であると考えます。また、その活動を通じて彼らが地域住民としての自覚を持ち、主体的にまちづくりに参画する意識を醸成することができ、将来には伊勢崎に活力を生み出す源泉になると信じます。
本年度は、以上の取り組みを通して、永く続くまちづくりの実現を図っていきます。

【子どもの将来の可能性を最大限に拡げる教育】

「子どもの将来の可能性を最大限に拡げてあげたい。」子を持つ親として、私は常々考えています。 日常的に目にするものや触れるものが世界と繋がっている現代の世の中では、子ども達には世界規模で物事を考えるための教育が必要であると私は考えます。また、日本の社会はすでに日本人だけのものではありません。大企業も中小企業もビジネスチャンスを求め、あるいは生き残りを賭けて、企業活動の範囲を世界に拡げています。子ども達が学業を終えた先の社会で求められるのは、グローバルな視点や経験をもった人材なのです。
また、常に変化し続ける国際社会の中では、前例がないことを避けて成功することは困難であり、未知なるものに挑戦する気概が求められます。前例がなくとも自ら考え行動し、問題を解決することができる能力は国際社会の中でも重宝され、子ども達が将来、社会人になった際にも大きな武器となり得ます。
以上のことからも、自分とは異なる文化や価値観の理解と尊重の重要性を伝え、世界規模で物事を考えることのできる素養を育むと共に、未知を恐れず自ら考え行動する能力を身に付けさせることが、子どもの将来の可能性を最大限に拡げることに繋がると言えます。

 否が応にも進むグローバル化によって様々なものが変化する中で、教育における子どもの評価基準も変化しています。世界の教育では、子どもの評価は勉強だけがその対象ではなく、いかに多様な経験をしたかが問われます。学校運営においても、勉強ができる学生を集め知能指数の高い単一的なコミュニティーを作るより、多様なバックグラウンドをもつ学生を集めることの方が、学生にとって有益であるという考え方が一般的です。その事実から分かる通り、子ども達の将来のためには、多様な経験や体験を積むことが必要であると言えます。そうであるならば、我々が行う青少年育成事業は、家庭・学校に次ぐ第三の教育の場として大変重要な意義を持ちます。我々がこれまで行ってきた青少年育成のノウハウを総動員し、自由な発想で事業を行うことで、家庭や学校だけでは得ることのできない様々な経験や体験を子ども達に与えることができるはずです。
本年度は、以上のことを念頭に置き、子どもの将来の可能性を最大限に拡げるべく事業を展開していきます。

【結びに】

 我々は、明るい豊かな社会の実現という終わりのない壮大な理想を掲げ運動しています。言うまでもなく、それは我々の力だけで成し遂げられるものではありません。我々の理想を実現し、継続していくためには一人でも多くの方のご理解とご協力を得ることが必要です。そのためには、まず我々自身が率先して行動していかねばなりません。受け継いだ歴史と伝統を原動力とし、覚悟を決めてメンバー全員で一丸となって突き進んでいきます。
最後になりますが、公益社団法人伊勢崎青年会議所 第55代理事長として、誠心誠意職務を全うしていく所存です。何卒、メンバーならびに地域の皆様のご理解とご協力、ご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げ、私の所信とさせていただきます。