2010年度 理事長所信

はじめに


第47代理事長
角田 修

 経済大国、日本。世界の国々と比較すると、日本は日常の食料や品物が満たされています。最も充足された生活をおくることができる国であるはずです。しかし、日々流されるニュースは、耳をふさぎたくなる事件を数多く伝えています。そのような事件が起こる原因の1つには、食料や品物が満たされている反面、大切な何かが不足していると考えます。
 人類や地球の歴史あるいは世界の広さを念頭に自己を省みることができれば、悩んでいたことや怒っていたことの小ささに気付いて、相手を思いやる気持ちが生まれるかもしれません。そうすれば無情な事件は少なくなるでしょう。短絡的、感情的に行動してしまうのは、目の前のことや些細なことに気持ちが向いていて、相手を思いやる気持ちが不足しているのではないかと思います。私は、今よりも多くの人が精神的なゆとりを持って生きていける社会を切望します。
 輝かしい未来で心のゆとりのある生活を送ることができるように、社団法人伊勢崎青年会議所は、様々なことを模索し、考慮し、判断し、そして行動しなければなりません。

公益法人格の取得検討

 現在、社団法人格を有する青年会議所は、大きな岐路に立たされています。近い将来「公益社団法人」か「一般社団法人」のどちらかを選択しなければならない時が来ます。どちらを選ぶにしても2012年までにそのための申請が必要です。さらにそのためには2011年に申請のための準備が必要です。つまり本年は、それぞれの差異を明確にし、伊勢崎青年会議所の実状と比較しながら、選択するべき法人格がどちらなのか検討します。
 同時に、公益社団法人格を取得する場合に問題となる点を把握する必要があります。取得する基準が「一般社団法人」よりも厳しい「公益社団法人」の検討を先行することで、後々、「公益社団法人」を希望するけれども時間の不足によって間に合わなくなってしまうということを回避します。
 2013年11月30日までに組織変更の手続きを完了しないと、解散したとみなされてしまいます。「社団法人」伊勢崎青年会議所は4年後には、「一般社団法人」、「公益社団法人」のどちらかになっています。もしそうでなければ、「解散」、「任意団体」または「NPO」のいずれかとなっています。社団法人伊勢崎青年会議所の今後のあり方を検討します。

会員拡大の必要性

 会員の拡大は急務で最重要課題の1つですが、国内の40歳未満の人口が減り、全国の会員会議所の会員数が減る傾向にあるのは、伊勢崎青年会議所にもあてはまります。全国的に見ても人口が増えていることで取り上げられる伊勢崎市も、20歳から40歳までのJC世代に限りますと減少しています。そうだからといって、会員の拡大ができないわけではありません。今まで重視していなかった地区、業種、企業および団体などに目を向け、理解を得られるように努力し、更なる会員の拡大を推進します。
 市民意識を変革するには、長い時間と労力がかかります。この運動を広げていくには、多くの同志が必要です。会員の一人ひとりがJCを語り、地域の人々に伝え広げていくことがJC活動の基本です。会員の拡大は会の活性化に直結し、それは地域の活性化につながり、そしてまた、多くの人との出会いによって人は成長します。

会員の資質を向上させる研修事業

 青年会議所の会員が地域のリーダーとして活躍するためには、個々の会員が各々の資質を上げる必要があります。私は、今まで地域の皆様と一緒に事業を行なった際、一般参加者として来ていただいた方のほうが会員よりも問題意識が高いと感じたことがありました。事業に参加してくださる人は、何かしらの問題意識をもって参加してくれているので、それは当たり前のことかもしれません。
 しかし主催する我々は、一般参加者のそれと同等以上の問題意識を有することが望ましく、その向上心は持ち続けなければなりません。事業目的ごとに取り上げるテーマは異なります。そのテーマについての問題点を予め知ることはその担当委員会から学ぶことができますが、一人の人間として、自分を磨く心、意志の強さや相手を思いやる気持ちが重要と考え、基本的な土台となる資質を鍛える事業を行ないます。困難なことを達成した後には、誰もが自信を持ちゆとりが生まれます。
 今までも伊勢崎青年会議所では、数多くの会員向けの研修事業を行ない、会員の資質を高めてきました。本年は、今まで会員向けに行なってきた研修事業であっても、それぞれの事業目的に合致していれば、一般の人にもぜひ参加していただきたいと思っています。その理由は、お互いに不足している知識、技能および手法などを補完しあえるからです。閉鎖的なものではなく、開かれた公益的な視点で研修を行うことによって、会員のみならず一般参加者の意識までも向上していただくことができると考えるからです。

自然環境事業の取り組み

 国連食糧農業機関(FAO)が2年に一度発表している「世界森林白書(State of the World's Forests)」の2007年版によれば、世界全体では毎年0.2%ほどの割合で森林が消失しています。年間の森林消失面積は730万ヘクタールです。約3秒ごとにサッカー場1つ分の森林が消えました。これは地上で起きている様々な現象のうちの一端です。
 地球環境は、伊勢崎地域だけで解決できる問題でないことは承知しております。しかし一人でも多くの人が自然環境問題に関心を持ち、環境に良い行動をすることによって、未来の地球の姿が変わっていくものと考えます。
 例えば川をきれいにするということも、専門業者に頼めば効率よく行なえます。しかしながら、きれいになったから良いということではなく、その川をきれいにするという行動をそこに住む人たちが行うことで、参加してくれた人たちの自然環境に対する意識や価値観が上向く、そのことが大切です。
 子ども達と一緒に、少なくとも一度は環境に関する活動を行いたいと思います。今までの生活習慣や価値観を変えがたい大人よりも、柔軟な頭を持っている子どもの方が自然環境のために、それらを変えてくれる可能性が大きいからです。またその子ども達が大人になっても無理なく自然環境に良い行いを続け、その行いを自分の子どもに引き継ぎ、地球環境が回復していくことを願います。
 自然、そして地球のために何かできることを模索し、地域の皆様と環境に関して気付き考える機会をつくります。未来に生きる子ども達のために、美しい地球を守るためにできることが必ずあるはずです。

子どもに関する事業の実施

 子どもは未成年です。身体、精神、知識、道徳観、価値観なども、発達や発展している途上で一人前になっていません。それ故に、弱く、傷つきやすく、時には自分を守るために反発したりします。それらのことを踏まえて、大人はもっとゆとりをもって子ども達に接するべきです。子ども達が思っていても口にできない心の言葉に大人は耳を傾けるべきです。子どもの心を尊重し大切にするために、大人が気付かなければならないことがあります。子どもが何か悪いことをしてしまうのはそのように育てた環境、特に家庭における親御さんを始めとする保護者の子どもに対する接し方の影響が少なからずあるはずです。子どもを取り巻く家庭環境を改善するための事業を行ないます。
 また、子ども達が強くたくましく闊達に生きていくには、自分が良いものを持っているという自己認識や、自分の意思でしたことが他人から褒められ認められたという経験が必要です。「僕って(私って)すごい!」と感じた気持ちが自信に変わり、子ども達は積極的になります。そうすることによって、潜在的な能力が引き出され、子ども達の新たな可能性が広がります。
 他に、コミュニケーションの取れる人間関係を築くには、相手の気持ちをわかりあえることが必要です。他の人と同じ感覚になる力を育むことが必要です。それは共感する力であり、同じ時に同じ物ごとで同じような感情を共に持つ、そのような経験を積むことで養うことができます。共感力を磨くのは、子ども達がこれから生きていく中で出会う多くの人との関係を、より良く築く上でとても大事だと考えます。

結びに

 2010年度社団法人伊勢崎青年会議所の理事長として、私の思うところを述べさせていただきました。まずはそれらの問題点に気付き、理解することから始まります。その上で伊勢崎青年会議所としてどうあるべきか考慮し、判断し、行動に移します。
 今日よりも明日へ、今年よりも来年へ、現代よりも未来へ、心のゆとりを持つひとが1人でも多くなることを、またそのゆとりが少しでも大きくなることを願います。
 私もこの地域に、地球に生かしてもらっています。驕ることなく謙虚に、また誇りを持って精一杯活動させていただくことをお誓い申し上げ、理事長所信とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。