理事長所信

第62代 理事長
角田 新悟

【はじめに】

 2016 年、私は「学びの機会を得ることができる」と紹介され、社会人として様々な経験を積みたいとの想いから、青年経済人の団体である青年会議所の門を叩きました。企業経営を行う立場では無く、知り合いもいなかった私を、青年会議所は快く迎え入れてくれました。日本で最初の青年会議所が設立されて75 年、青年会議所はその理念を変えることなく、時代に合わせて柔軟に変化し、誰にでも開かれた組織となり、私のような経歴を持つ青年にも様々な成長の機会を与え、理事長の職をお預かりさせていただくこととなりました。何も持たずに日々をただ過ごしていた 1 人の青年をここまで変化させた青年会議所の実践的な教育プログラムを、次代を担う青年たちにも成長の機会として提供することが、今では私の使命だと感じています。
 伊勢崎青年会議所は、1964 年に全国で 257 番目、群馬県内では 4 番目の青年会議所として認証されて以来、61 年間にわたり運動を展開してきました。その歩みには地域の発展と、所属する会員の意識の変革があります。愛する地域やこの国の未来を想い、様々な課題に向き合うことで、私たちは多くの成長の機会を得ることができます。青年会議所は、満 20 歳から満 40 歳までの会員資格を設けています。40 歳で卒業を迎え、地域に変革を起こそうと真剣に行動を起こした実績のある人財を、地域のリーダーとして輩出することで、地域は活性化されます。だからこそ、私たちにはこの活動を絶やすことなく、より良い形で次の世代につないでいく責務があります。先輩方が地域に起こしくださった運動は、多くの方に認知され伊勢崎青年会議所はまちづくりを通して広く信頼を得てきました。しかし、私たちがどのような活動を行い、どのような事業を行っているのか認知している方は少ないように感じます。これは、同様の活動を行う団体が多く生まれたことが一因と考えられます。しかし、青年会議所が展開する運動はそのような団体とは一線を画し、地域や市民の方を豊かにする力を持っていると、私は確信しています。より地域に必要とされる存在となるために、歴史ある団体の一員である誇りを胸に、変化を恐れず、この地域のために誰よりも率先して行動する気概を持って、共に未来を切り拓きましょう。

【次代を担う JAYCEE を育成】

 青年会議所の活動は決して楽とは言えるものではありません。しかし、人生で最も多忙である時期に活動を行うからこそ意味があり、限られた時間で様々な議論を尽くし、決断をしていくことは、何事にも代えがたい貴重な経験です。私自身も同志と共に地域の課題解決に向けて活動を行うことで、様々な経験と友情を育んできました。そしてそれらは、私自身を変化させ、今では地域の発展や自己の成長に対して前向きに取り組むようになりました。青年会議所は「最後の学び舎」と言われることがあります。そう言われるようになったのには、これまで多くの青年が JC 活動を通し発展と成長の機会を享受してきたことが裏付けとなっていると考えています。これからも青年会議所は、「まちづくりを通して人づくりを成す」組織で在り続けてほしいと思います。
 群馬ブロック協議会などでは、入会から在籍 3 年未満の会員を「アカデミー生」と称し、入会間もない会員向けに青年会議所の会員としての資質を向上させることを目的とした研修事業を盛んに行っており、伊勢崎青年会議所でもその取り組みを行っていく必要があると考えています。伊勢崎青年会議所の会員構成に目を向けると、次代を担う会員の資質向上が急務です。入会から在籍 3 年未満の会員は、全会員数の約47%と大半を占めています。また、近年は経験豊富な会員が多く卒業を迎える一方で、中間層の役職を担うに相応しい経験を積んだ会員が少ない状況にあります。この組織を理解し、活動を能動的に行える会員が減少することは、JC 運動の質を維持することができなくなることに直結します。また、在籍する会員のこれまでの経歴の傾向を見ると、様々な事業を構築する中心となる委員長の役職に就くまでに約 3 年の期間を要します。これを、全国的な会員の在籍期間と照らし合わせると、委員長や役員の担い手はさらに少なくなっていきます。短い在籍期間でも委員長などの役職を担えるように JAYCEE としての資質を底上げしなければなりません。
 青年会議所に関心が高い入会間もない時期に、入会年度が近い仲間と共に JC 活動を深く理解し、苦しさだけではなくそこから見出される楽しさを感じ、共有してもらうことで、これからの伊勢崎青年会議所をより強い組織に押し上げることができると考えています。本年度は、アカデミープロジェクトチームを設置し、入会 3 年未満の会員の資質を向上させることを目指します。入会間もない会員が、会の運営や事業を積極的に考えていただくことはこれまでの青年会議所の常識にとらわれず、時代に即した運営や活動のヒントとなります。そして、自分たちが会を背負っていくときにその経験を大きな糧にしていただくことで、今よりも素晴らしい運動を展開していただけると信じています。

【いせさきまつりと共に組織を盛り上げよう】

 いせさきまつりは、約 17 万人を動員する、伊勢崎市で最も大きなイベントの 1 つです。そのメインとも言える「おまつり広場」を、伊勢崎青年会議所は 40 年余り担当し多くの方の想い出にいせさきまつりを印象付けてきました。
 当会においてこの事業の企画や設営は、次代を担う若手の会員のスタートアップとして長きに渡り受け継がれ、いせさきまつりプロジェクトチームは、若手の会員を複数の部会の中心メンバーとして構成してきました。不特定多数の幅広い市民の方に楽しんでいただき、貴重な体験を提供することは、青年会議所が展開する事業に通ずる点が多くあり、今後の事業構築を行う上での礎となります。また、会員同志の交流においても重要な役割を持つ事業です。当会が開催する他の事業と性質の異なるいせさきまつりを会員が自ら楽しみ、JC 運動を肌で感じ、仲間と共に事業構築や運営を行うことは重要な要素であると考えます。
 本年度もこれからの青年会議所を担う会員を中心メンバーとしていせさきまつりプロジェクトチームを組織します。多くの市民と共に地域の行事を支え、仲間と共に JC 運動を展開することで、今後の活動の地盤を固めることができれば、多くの方により有益な事業を展開することができ、いせさきまつりをさらに盛り上げることができるでしょう。

【自らの活動を知り、魅力を伝える会員拡大】

 青年会議所の会員数減少は近年頻繁に叫ばれており、全国の青年会議所の課題です。青年会議所は、その名の通り青年が様々な地域課題の改善に向け会議を行い、数々の事業を展開します。多くの会員数を有することで、その数に比例したアイデアを保有することができ、より多角的な視点で議論を尽くすことで活動の精度は向上します。また、青年会議所は会員の会費を主な収入源とし、事業などを展開しています。会員数が減少することは、事業の可能性の幅を狭め、大規模な事業を開催することができなくなることにつながりかねません。青年会議所が展開する事業の恩恵を地域や市民、さらには在籍する会員にこれからももたらし続けるためには、会員拡大は最も注力しなければならない運動のひとつです。
 しかし、単純に会員数を増加させることは会員拡大の本質ではないと考えています。青年会議所は自らが住まう地域に想いを馳せ、様々な取り組みを展開します。その過程は、これからの地域のリーダーたらんとする人格を育むことに長けています。JCI(国際青年会議所)の活動指針である JCI MISSION には「青年会議所は、青年が社会により良い変化をもたらすためにリーダーシップの開発と成長の機会を提供する。」と記されおり、青年会議所出身者を 1 人でも多く地域に輩出し、地域を発展させることは我々の使命です。私たちがこの地域のために活動することが地域の発展に繋がると信じているように、市民から多くの賛同者を迎え入れ、愛する地域を発展させる原動力としましょう。
 一方で、入会候補者には数ある青年団体から青年会議所を選択していただかなければなりません。そのためには、私たちが行っている活動を多くの方に解り易く伝えることが重要です。様々な媒体から情報が錯綜する現代において、私たちが展開する活動は多くの人の目に留まる可能性を秘めています。まずは私たちが、自らが行う事業を深く理解し、魅力を発信することで伊勢崎青年会議所を広く多くの方に認知していただき、事業や活動を評価していただくことで賛同者が増え、それは人から人へ伝播し、入会候補者にも届くはずです。本年度は、ただ広報するだけでなく、目標を立て、我々の活動を知ってほしい相手にどのように伝わり、どの程度共感を得ることができたのか、実施と検証を繰り返し、より多くの賛同者を獲得することを目指します。

【愛着が織り成す地域活性化】

 日本の総人口は急激な減少を続けています。2020 年の国勢調査*1 によると、1 億 2,614万人であった総人口も、2056 年には 1 億人を割ると推計されています。人口減少社会には多くの課題がありますが、特に注目しなければならないのは、生産年齢人口の減少だと考えます。生産年齢人口の減少は経済活動に直接的な影響を与え、地方都市や中小企業にとって深刻な課題です。特に地方都市では、若い世代の首都圏や他の都市部への人口流出が多く、高齢者の割合が高くなることから労働力不足を招き、雇用の量や質が低下するなどの影響が懸念されます。また、企業が十分な人材を確保できず、競争力を失うことは、経済成長の停滞などを招きます。
 近年、伊勢崎市でも若い世代の首都圏や市外への転出が多く見られます。就学などで一時的に伊勢崎市を離れてしまうことがあるかもしれませんが、故郷に多くの魅力や愛着があれば、再び伊勢崎市に住みたいと思っていただけるはずです。人口減少を避けることはできませんが、想定される影響を抑えるためには、転出による人口減少を抑制していく必要があります。若い世代の転出の抑制と再度の転入促進がこれからの伊勢崎市の課題です。若い世代が市外に転出してしまう要因には、教育機関や職場の選択肢の少なさ、都市部の利便性、娯楽や文化などの不足などが挙げられます。一方で、伊勢崎市への転入者は転出者を上回っており、伊勢崎市は住みやすく生活の基盤の地として一定の評価を得ていることが解ります。多くの方に伊勢崎市を想っていただくことが、地域活性化の原動力であることに他なりません。そのためには、若い世代が地元に定住することを促し、地域の特色を活かしたライフスタイルの提案が必要です。伊勢崎市に愛着を抱いていただけるような事業を展開し、伊勢崎市の生産年齢人口の維持に貢献することで、地域活性化を目指します。

【自らの手で未来を拓く、青少年育成】

 日本は 1945 年に男女平等の完全普通選挙制度が確立されて以来、選挙権を有する国民や市民が将来を考え、自らの意思を政治に反映させてきました。本来、この権利は非常に尊いものであるべきです。しかし、2021 年に行われた衆議院議員選挙の投票率*2 は55.93%と、先進国の中でも低い水準となっています。世代別の投票率は、40 歳代以上は50%を超えるのに対し、30 歳代以下の若年層は 40%台にとどまり若年層の政治への関心の低さが顕著に現れています。
 一方で、2015 年に選挙権年齢が満 20 歳以上から満 18 歳以上に引き下げられました。2022 年に行われた伊勢崎市議会議員選挙*3 では、10 歳代の投票率は、20 歳代の投票率を上回り、新たに与えられた権利への一定の関心が見られるものの、全体的には他の年代に比べて下回る低い水準です。多くの有権者が政治に関心を持ち、適切な動機や根拠に基づいて、自らの意思表示をすることで、より多くの市民が住みやすいまちづくりが進んでいきます。若年層が投票に行かない理由として、「興味が無い」「意味が無い」「選挙や政治がよく解らない」などが挙げられています。少子高齢化が進む日本において、若年層の政治への関心が低いという現状は、政治が若年層の声をより反映しにくくなります。しかし、自分たちの住まう地域や国の将来について考えることは非常に重要です。多感で様々な事柄への関心が高まりやすい青少年期に自らの持つ権利や政治について学ぶ機会を提供することで、やがて彼らがまちを担う年齢になったときに必ず活かされ、まちづくりの意識をさらに次代へと持続させることができるはずです。次代を担う青少年が将来を考え、他者との意見交換を行い、理想を語り合っていただくことで、自らの手でまちづくりを推進していただけるように、主権者意識や政治への参画意識の向上を目指した活動を行ってまいります。

【結びに】

 次代を担う青年が自らの住まう地域を真剣に想い、行動を起こしたことが日本の青年会議所の起源です。私たちは創始の精神を忘れず、しかし、時代に即した活動を行っていかなくてはなりません。そして、1 人でも多くの青年に、私たちが展開する運動に参加していただき、多くの自己成長と変革の機会を得ていただくことが、この地域を明るい豊かな社会に導くことに繋がると信じています。これからもこの尊い運動をさらに飛躍させるべく、1 年間全力で職務を全うする所存です。
 結びになりますが、伊勢崎青年会議所がこの地域で様々な活動を展開してこられたのは、行政並びに諸団体をはじめとする地域の皆様のご理解とご協力があったからこそに違いありません。改めて心より御礼申し上げると共に、引き続き伊勢崎青年会議所へのご指導ご鞭撻並びにご協力を賜りますよう心からお願い申し上げ、第 62 代理事長所信といたします。


※1:総務省「令和 2 年国勢調査 人口等基本集計 結果の要約」
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka/pdf/summary_01.pdf

※2:総務省「国政選挙における年代別投票率について」
https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/

※3:伊勢崎市「選挙の記録」年代別投票率 令和 4 年市議会議員選挙
https://www.city.isesaki.lg.jp/soshiki/senkyo/2584.html